パーソナルコンピュータの業界ではこの1年動きが激しくなってきております。それはソフトウェアだけではなくハードウェアに至るまで様々な変化が発生しております。
既に紹介したようにAppleから衝撃的なアナウンスが出て約1年です。Appleから販売される全てのコンピュータをApple Siliconに置き換えるとアナウンスされたのは、2020年のWWDCのことでした。あれから1年、Appleは予定通り、Apple SiliconのM1を搭載したMac MiniとMacbook Airを年末にリリースしました。そしてそれから少し遅れてiMacもリリースしました。この反響は相当なものです。Appleの株価は過去最高値をつけて、次のM1XやM2というApple Siliconの噂まで出てきております。
スマホのマーケットは別として、PCのマーケットはいまだにWindowsが主流です。こちらのサイトでは、2021年6月時点でのデスクトップマーケットでは73%弱がWindows OSとなっており、MacOSの16%弱からすると圧倒的なシェアを誇っています。
近年、Appleの垂直統合というビジネスモデルを多くの企業がマネをする方向に向かっております。スマホのシェアにおいてはAppleはシャオミに抜かれて3位になったという報道がありましたが、スマホから得られている利益についてはAppleは圧倒的に一人勝ちをしております。これは垂直統合のモデルにあるというのが大方の味方ですが、私はその奥にもっと重要な真実があると考えております。(これについてはまたの機会にします)
一方でマイクロソフトはパソコンの水平分散型のビジネスモデルでWindowsのシェアを伸ばしてきているため、今更上記のような圧倒的シェアを投げ打って垂直統合に向くことは不可能でしょう。つまり、Windowsとしては今までと同じように、ハードウェアのパートナーという優良顧客をベースとしたビジネスモデルが主流になるものと思われます。Surface Proなどのマイクロソフト製のハードウェアを作っておりますが、これをビジネスの主流にしてしまうと、OSのマーケットシェアが減少していくと思われます。なぜならハードウェアベンダーがマイクロソフトを競合とみなすからです。ここにクレイトン博士がいう「イノベーションのジレンマ」があるわけです。
もしもまだ読まれていない方がおられましたら読むことをお勧めします。Appleのジョブズも参考にしていたと噂される本ですので、AppleやMicorsoftの今後の動きを見るには大変参考になります。
マイクロソフトはWindows11でハードウェアのスペックに対して干渉を始めています。
Windows 11、TPM 2.0 チップを搭載 ハードウェアベースでセキュリティ保護を実現
これはこれまでと同じで、ある程度のWindows標準のハードウェアスペックを描きながらWindowsというOSが進化していきます。WindowsにとってはハードウェアメーカーはWindowsのバリューチェーンに組み込まれているからです。イノベーションのジレンマの著者であるクレイトン・クリステンセンはこのバリューチェーンこそがイノベーションのジレンマであると言います。既存のバリューチェーンがイノベーションを阻害することが多いということです。自動車会社にとってのディーラーもそうです。サブスクモデルに移行したいのだが、自動車のディーラーはサブスクモデルになると売り上げが短期的に大きく減ってしまいます。マイクロソフトがSurface Proにパワーシフトができないのは、既存の優良なバリューチェーンを壊すことができないからに他なりません。
Apple Siliconに代表されるようにクライアント端末はARMアーキテクチャに動き始めておりますが、WindowsがARMアーキテクチャに動き出すのはいつになるでしょうか?先日、以下の投稿をしましたが、各社ARMアーキテクチャに動き始めています。
マイクロソフトが同じようにARMをベースとしたSoCに動くのであれば、Windowsがやらなければならないことは沢山あります。例えば、AIのライブラリをSoCに合わせてアプデするなどが必要となります。AppleやGoogleは自社のSoCに対応したPythonのライブラリなどを開発しているという噂もありますので、完全にARMベースのSoCでWindowsのOSを動かすためにはまだまだやることがいっぱいあるはずです。
マイクロソフトが「Windwos11が動くSilliconはQS、NS、GS、ISだけですよ!」とSilliconの指定をしてしまうと今度はハードウェアメーカーの存在意義がなくなってしまいます。ハードウェアメーカーは製造するだけの会社となってしまうでしょう。そうするとほとんどAppleが行っている垂直統合のビジネスモデルと変わらなくなってしまいます。
さて、これからマイクロソフトとハードウェアメーカーとの関係はどのように変わっていくのでしょうか?
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