Apple Siliconが搭載されたM1 Macが発売されてから半年が経ちました。最近になって、ARMアーキテクチャのCPU開発がかなりホットな話題となっています。少し前後はしますが、ほぼ時系列に見ていきましょう。
マイクロソフトはQualcomとARMアーキテクチャのCPUの開発を行なっていると噂されていました。(2020年12月)
そしてこのことは先日Qualcommからも開発しているという情報が発信されました。(2021年7月)
QualcommがAppleのM1に対抗するチップセットを独自に開発へ
しかし、これだけではありません。Qualcommの発表とほぼ同時にNVIDIAがARMベースのCPUをサポートすることを発表しています。(2021年7月)
NVIDIA、プラットフォーム「AI-on-5G」でArmベースCPUをサポート
これは驚くべき出来事ではありませんでした。何故ならARMはNVIDIAの傘下になっているからです。(2020年9月)
NVIDIAがArmをソフトバンクグループから4.2兆円超で買収
しかし、いまだにこの買収には異論が出ております。Qualcomm「異議あり!」(2021年2月)
Qualcomm、NvidiaによるARM買収に「異議あり」
英国政府の介入(2021年4月)
ARMは元々は英国の企業でした。ソフトバンクグループが2016年に3.3兆円でそれを買収しました。
異論が出ているということは、一緒にビジネスをしたいとラブコールを送る会社もあるということでしょう。英国政府の介入は表向きは安全保障上の問題ということですが、このシリコンの重要性が増しているということでもあります。
一方、NVIDIAはGPU(Graphics Processing Unit)で有名な会社です。GPUとは画像処理などをおこなう場合、浮動小数点の計算をかなり使うので、通常のCPUとは違った能力が必要となることから開発されてきたものです。そして、それが計算処理の多い人工知能にも活用できるということで、現在では人工知能の処理にも使われております。しかし、AppleのM1は、このGPUも自社で開発を行なっており、NVIDIAとしては脅威に感じてARM買収を決断したのでしょう。
Appleとスマホビジネスで切磋琢磨をしているGoogleも例外ではありません。(2021年4月)
Google Pixel 6が自社設計8コアARMチップを搭載か
GS(Google Silicon)と呼ぶそうです。Googleは以前からTPU(Tensorflow Processing Unit)という人工知能専用のSiliconを開発しておリます。深層学習などを使う人工知能では大量の計算をしなければならないことがあります。Tensorとは多次元配列のことで、深層学習では、この多次元配列掛け算をします。数学(線形代数)の得意な人はわかると思いますが、多次元配列×多次元配列のような2層(深層学習の深層とはこれを何重にも重ねること)の掛け算でもかなりのデータを処理が必要となります。それゆえに通常のCPUでは間に合わないような計算が必要になります。
役者は揃っているように見えますが何故ここまでARM界隈にいろんなアクションが出てくるのでしょうか?幾つかの理由があると思いますが、今日はその一つであると思われることを話します。ズバリ、全力消費です。
それは以下の記事が参考になるでしょう。アマゾンウェブサービスがM1 Macをクラウドで活用することがすでに発表されております。しかも、M1 Macが発売されたすぐ後です。(2020年12月)
Apple M1はnotebookやデスクトップのSiliconです。クラウドのようにサーバを扱うにはまだまだスペックは足りません。Appleはさまざまなアナウンスを秘密裏に進める会社として有名でが、この発表は発売してすぐ後に行われています。考えられるのは2つで、かなり前からAppleとアマゾンが話をしていたのか?それともアマゾンが単属でビジネスになると踏み切ってAppleからハードウェアを調達することを決めたかです。
クラウドベンダーが使うハードウェアはコストを下げるために、通常は自作のハードウェアを利用することが多く、特にAppleのようなハードウェアを正規価格でしか販売しないところからは調達することはなかなか考えられません。しかし、そこまで価値があると見ているということでしょう。その価値は電力の消費量だと私は思います。
現在データセンターやクラウド事業者の間では、SDG’sなどの対応の追われていると思います。クラウドのサーバは増え続けており、そのため必要な電力も増え続けているはずです。Performance per wattという言葉をAppleのCEOのティム・クックが昨年のWWDC2020で仕切りに話していたのはそこにあります。そして実現したApple Siliconはアップルの重役も驚くほどのものだったということです。(2021年7月)
アップル幹部、M1 MacBookのバッテリー持ちが良すぎて「バグだと思った」と振り返る
Apple Siliconは只者ではないことがわかるかと思います。
(ちなみに、本日、喫茶店にて4時間、youtubeでWeb開発の動画をみたり、このブログを書いたりしておりますが、バッテリーはまだ80%あります。消費量は5%/hですね。M1 Macbook Airを使い始めてから、電源コードを持ち歩くことはほとんどなくなりました)
[…] 前回の投稿、AppleのM1 Macはなぜ注目されるのか?(2)ではバッテリーが長持ちすることを書きました。バッテリーが長持ちするだけではなく、CPUのファンが唸りません。リモートワークをしているとCPUが「ブーン」や「シャー」という音とともに冷却されることが多いと思いますが、M1 Macはそれを経験したことがありません。M1 Macにはファンレスのものとファンがついているものと2種類ありますが、私はその2種類ともファンが唸ることを体験したことがありません。 […]
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